今回紹介するのは、マンガ『昭和元禄 落語心中』です。
助六と八雲という2人の落語家の世代をまたいだ芸と名前の伝承とそれに関連した愛憎がテーマになっています。、人間関係の因果が複雑にからみあった奥深いストーリーに仕上がっています。
以前からストーリーが面白いと紹介され、題名だけは知っていて、気になりながらも手にとっていなかった作品でした。
うわさ通りの秀作です。先の展開が気になって一気に読みました。
1度読んだだけではうまくつながらない部分もあるので、ぜひ数回は読んで欲しい作品です。
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『昭和元禄 落語心中』
雲田 はるこ著
落語という芸を磨き、後に8代目八雲となる菊比古と後に助六となる初太郎のタイプの違う若きふたりとその関係者たちが、それぞれの愛憎を精一杯生きます。
それぞれを業いっぱいで生きることが、人生のお役目を果たすことにもつながっているのが感じられます。人生のキャスティングってこういうものなのかと思える見事なストーリーでした。
題名の『落語心中』の心中というのは、主人公の8代目八雲のセリフに 自分の芸を自分の代で終わらせる = 「落語と心中する。」というものがあって、この言葉からとったものだと思います。
他にも落語に人生を狂わされる(多大な影響を受ける)人々がたくさんいてそれが心中という単語と重なり、暗喩のようにも感じられます。
特に、小夏の両親である助六とみよ吉がアクシデントで亡くなってしまう事件はすべてのカギになっていて、暗い影を落とし続けます。しかし登場人物たちはそれを正面から抱えて生きていくので、読んでいて途中、苦しくなってしまうほどでした。
時代ともに落語を取り巻く環境の変化も描かれて、落語とは何かを考えることになりますが、ひとくちに落語といってもそれを演じる人によって全く違ったものになります。
それぞれの登場人物が違った役割を持っている故に、伝統を守る形になったり、新しい挑戦をする形になったり。時代の変化や人の変化など変わりゆくなかで、落語は伝統であり続けながらも変化しながら生き続けていきます。
読後には
人の愛憎とか業とか、人情とかうまくいえない余韻が残りました。
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ストーリーの終わらせ方がとてもいいです。
特に複雑な関係だった8代八雲と小夏のふたりが和解する?ところは良かったな~。こんなこともあるから人生っていいな。と思えました
そして、8代目八雲が死んであの世の三途の川の手前では、先に死んだ助六とみよ吉が待っています。すべてが水に流されて本当にいいシーンです。
精一杯生きたご褒美がこんな風ならどんなにいいかな。
最終話では
落語を愛する人たちによって形をかえながら、落語が受け継がれていくという本当のハッピーエンドでした。
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人生模様を描く落語自体にも興味がわいた作品でした。
そこには私の知らない豊かな世界が広がっているのかもしれません。
マンガって本当に世界をひろげてくれる豊かなものです。
じっくり、しっとりと業や人情を感じてみたい人は、手にとってみてください。
ぜひ最後まで読むことをおすすめします。
小夏と八雲師匠の若かりし同居時代を描いた完全新規描き下ろし番外篇マンガ20Pが読める特別版もあり
こちらは声優さんによる落語が音として聞けるので、さらに落語の雰囲気が楽しめる作品になっています。
私は amazon prime で全話を楽しみました。
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