『三国志』不滅の人間ドラマを楽しむ

今回紹介するのは
『三国志』です。

三国志に出てくる戦国武将たちの名は、たくさんのゲームのキャラクターになっていて、知っている人も多いと思います。
それが表すように、三国志の面白みは本当に様々なタイプの登場人物がいることだと思います。

三国志は20代の頃に一度読破していますが、50代になって再び読み直しました。
読後の印象は、若い頃とはひと味ちがったものになりました。

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『三国志』
吉川英治著

吉川英治氏の三国志は全部で8冊あります。
一度読破していても細かい話の内容までは忘れていたので、初めて読むように物語を楽しめました。

三国志の名の通り、3つの国が覇権を争いながらひとつの国に統一されるまでのお話になりますが、話の作りは蜀の劉備びいきになっています。
武将の活躍や国同士の政治争いはもちろん面白いのですが、2度目の今回気に止まったのが、
人物の多面性です。人生の中で人が変化していく様子にとてもひかれました。

それぞれの人物が年を重ねることで、若い頃にはなかった人間としての欲や弱さが出てきたり、自己の感情に流されて大局を見失ないそうになったり。そんな姿をとても人間らしいと感じたんです。

蜀の劉備はその人柄によって周りに人を集めて国を作っていきますが、年とともに感情に流されて大局を見失いかけるのを孔明に叱咤激励されているし、
魏の曹操は若い頃から戦いの才能が飛び抜けていましたが、年を重ねるとだんだん独善的になって人物を軽視するのが目につくようになります。
呉の孫権は、呉という国土の豊かさの強みで個人というよりも国力が優れていたのかな。そして何より曹操や玄徳よりも若かった。

そんな人物と気運、土地柄とのからみあいが三国志という物語だったんだな。と
そして2回めの今回は登場人物たちの印象が前回とは変わって、曹操と劉備の個人的評価が逆転しました。

曹操の武将好き、特に関羽へのベタぼれぶりは人間らしさ全開で好感が持てましたし、
逆に劉備は大事な場面での謙遜しすぎて決断が遅く「あなたがやりたいことは何!」と突っ込みたくなってしまいました。
諸葛孔明も活躍よりも苦労ぶりが気になってしまいました。

初めて読んだのは、20代前半で今回は50代前半。
前回の印象は「曹操横暴!劉備いい人!孫権は印象薄い。」こんな感じだったんですが、印象が変わったのは、やはり自分の人生経験から視野が広くなったのが理由かもしれません。

20代は民衆の立場で三国志を読んでいましたが、今回は子育てもして人の面倒を見る立場を経験して再び読み返すと違った物語のように思えました。人の上に立つ側の気持ちもわかるようになって物語を見る立場が変わったのだと思います。

しかし一番好きな登場人物は、趙雲子龍だったのは変わりませんでした。
数は多くないのですが、趙雲が出てくる場面の安心感がハンパないです。人物的にも成熟していてバランスが取れている気がします。

読みながら頭によぎってたのは、人気漫画キングダムの王騎の言葉です。
「だから、戦国の世は面白い。」

どんな強者も次の世代にもっと強い者が現れて、それに倒されていく。それを面白いと言って笑って逝く王騎将軍の最後の姿を思い出しました。三国志でも同様です。どんな強者も次の強者に主役の座を譲っていきます。

「だから、三国志は面白い。」

歳を重ねて何度読んでも楽しめる名作です。
ぜひ手にとってみてください。

三国志の入り口には漫画もおすすめ、こちらも名作です。

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