荷物の生前整理の決定版!『片づかない!どうする我が家、親の家ミドル世代の暮らし替え整理術』

今回紹介するのは、実家片づけの決定版ともいえる本
『片づかない!どうする我が家、親の家 ミドル世代の暮らし替え整理術』です。

親世代の家の片づけ本3冊目ですが、片づけを避けたがる親世代の心理とその対策という面では、決定版だろうと思える充実した内容でした。

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『片づかない!どうする我が家、親の家 ミドル世代の暮らし替え整理術』
サマンサネット代表 杉之原冨士子著

著者は、パートとして始めた運送会社の事務から引っ越し部門の担当になります。梱包作業のクレームも処理もしていたのですが、「クレーム処理をするくらいなら自分が梱包の現場で作業してクレームが出ないようにしよう。」と自ら梱包作業をするうちに整理や片付けのプロになり、独立したという経歴を持ちます。
この経歴からも、非常に誠実で前向きな人柄がうかがえます。

様々な引っ越し梱包の現場を実体験しているので、紹介されている例は非常に生々しくリアルです。
例えば

部屋中に衣類が詰まって、ドアの隙間から手を伸ばして手に触れたものを引っ張り出してみると、壁には墨汁をぶちまけたような黒いシミ。それは破裂したパイナップル缶の成れの果てだった。

開けていないはずなのに中身が空っぽのスープ缶、オイルだけがなくなったツナ缶、クリームチーズ状になった抹茶の水ようかん缶。長期間放置することで缶が破裂していたのでした。

未開封の段ボールが積み上げられて迷路のようになっている家。
それは全部通販で購入して未開封のもので、届いたときには注文したのもすっかり忘れ、買った物への興味も失い、そのまま置いてあったものだった。

レジ袋に入れた買い物品がドサッと置きっぱなし。エルメスやシャネルといったハイブランドの服が脱いだままの状態で積み重ねられているうえに、ブティックの紙袋に入ったまま開けてさえいない服もたくさん。部屋の奥には数年前の引っ越しの時から開梱されていないダンボールの山が積み重なっている。

このような現場は、実際に存在するそうです。
このように数多くの現場で引っ越し梱包作業を経験した著者の言葉には重みがあり、
私にとっては普通の片づけ本の著者の言葉とは少し響きかたが違いました。

そしてこんな現場を経験しながら、著者の視点はとても優しいのです。

引っ越し梱包にも様々な現場がありますが、この本では人生の転換期であるミドル世代に焦点をあてています。
現場の実体験から生まれた整理術、片づけのノウハウはとても実践的です。

 

そもそも、なぜ片づけるのか?片づけた先にはどんないいことがあるのか?

「片づけは大変だから、やりたくない。」ありがちな言葉です。
しかし著者は言います。

散らかった家での生活こそ、本当に大変なのです。片づけの一番のメリットは、一度思い切ってやってしまうと、劇的に毎日の生活がラクになるということ。端的に言えば、片付けは主婦が楽をするためのものなのです。

出典:『片づかない!どうする我が家、親の家 ミドル世代の暮らし替え整理術』

片づけの大変さは終わりのある大変さです。片付けが終わったら、すべてのものがあるべき場所にあって、探さなくてもすぐに取り出せる、快適な生活が待っているのです。

出典:『片づかない!どうする我が家、親の家 ミドル世代の暮らし替え整理術』

家族がいる場合、家が片付いた状態を維持できるかどうかは、皆の協力にかかっています。私の家でも、モノがどこにあるかわからない時は、「はさみどこ?」「爪切りどこ?」と家族はいちいち私に聞いていました。私はその度に「はい。はい。」と出してあげていたのいたのですが、忙しいときは面倒でイライラしました。
片づけ方をマスターした今では、家族の誰も、私に探しものを聞いて来ません。モノが整理され、何がどこにあるのか、一目でわかるようになったからです。主婦である自分だけがモノの置き場がわかっていても、家族全員がわかっていなければ、私のストレスは解消されないだけでなく、家族にとってもストレスです。特に共用スペースについては、みんながモノの置き場所やルールを知っていることが重要です。

~中略~

探しものがない暮らしは、本当に想像以上に快適です。
そうなると、おもしろいもので、モノと家族の関係が近くなるからでしょうか、主人が料理するとか、子どもが自分でご飯を作って食べるという「家事も分担」が自然な形でできるようになってきます。

~中略~

「夫が何も手伝ってくれない」と不満を漏らす方がいますが、もしかしたら、ご主人はどこに何があるのかわからないので、手伝いたくても手伝えない」のかもしれません。
掃除や洗濯だって、片づいていないと何を手伝っていいのかが家族にわかりません。家族に「あれをやっておいてね」と言わなくても、やるべきことがわかるのが、究極の状態です。

出典:『片づかない!どうする我が家、親の家 ミドル世代の暮らし替え整理術』

そもそも、どうして片づけるのか?片づけ終わった先にはどんないいことが待っているのか?

この疑問の明確な答えが示されていました。

自分だけが家事を負担することがストレスになっている女性は本当にたくさんいると思います。
自分もそうです。

家族は使う人、自分だけが片づける人。
こんな状態にモヤモヤしているのは私だけではないはずです。

片づけた先には、
家族だけでなく主婦こそがラクできる。そんな快適な暮らしがぜひしてみたい

親の家の片づけのために手にとった本ですが、自分が目指したい家の姿がはっきりして、自分の家も片づけたくなってきました。
 
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困った実家の典型的パターンとその解決策

さて、この本のメインテーマである親の家の片づけですが、その典型的パターンが紹介されていました。
問題になるのは、親世代と子世代の価値観のギャップです。

タナカさん(40代・主婦)のご実家のケース
「私の実家では、70代の母親が一人で暮らしています。2階建ての一軒家で、かつて私と妹の子供部屋があった2階は物置状態で、ここ数年はほとんどあがってさえいないようです。
母は主に1階の台所と居間で寝起きしていますが、そこも布団や洋服ダンスなどのモノだらけで、足の踏み場もありません。
孫の顔を見せてあげたいけど、不衛生でアレルギーも心配なので、帰省の足も遠のいてしまいます。何とかしたいのですが、母に片付けろとか捨てろとかいうと、『私が死んだら全部捨てていいから、放っておいて!』と怒り出します。もうどうしたらいいのか、わかりません。」

~中略~

「安全で快適な暮らしのためにには、使っていないモノなんて捨てちゃえばいい」と考える子世代。「いつかは片づけなくちゃいけないと思ってはいるけどめんどうだし、まだまだ使えるからもったいない。第一、一生懸命働いて買ったモノなんだから…子どもに捨てろなんて言われる筋合いはない!」と考える親世代。
捨てるという言葉は、親世代にとっては自分自身を全否定されるが如くでアレルギー反応をひき起こす場合も多いのです。

このような場合、親世代、子世代、双方の価値観が異なるために、解決策がとても難しくなります。

出典:『片づかない!どうする我が家、親の家 ミドル世代の暮らし替え整理術』

私の夫の実家も私の実家も汚部屋状態ではありませんが、不衛生だからと帰省の足が遠のいたり、片づけを嫌がったりとかぶる部分はあります。結局のところ親ともめるのが嫌で、仕方なくそのまま放置している家がとても多いのだと思います。捨てろと言われると反発するシニアの心理が、モノに自分自身を重ねて自分を全否定されるように感じるというのは、子世代からは想像もしませんでした。

そして、溜め込んだモノを片づけるのには、気力も体力も必要なのは自分のことを考えてみてもわかります。

たくさんの現場を経験した著者は、片づけられない親世代の気持ちをわかった上で、こんな片づけ方を提案しています。
 

仕分け梱包~モノを捨てられない親世代の家はこう片づける~

お年寄りは大切なモノが捨てられてしまうことで、精神的にダメージを受けることも多いそうです。そんな中で著者が提案するのは、荷物の生前整理ともいえる「仕分け梱包」です。

どういうことかというと、普段寝起きする部屋と居間を過ごしやすく整えることをゴールにして、
「使っていないけれど、捨てたくないモノ」をひとつひとつ仕分けしてダンボールに梱包し、中身を書いて、余った部屋に避けておくのです。

スペースがなければ、トランクルームを利用して荷物をいれておくという選択肢もありです。

思い出の品はちゃんととってある。いつでも見たい時に取り出せる。それさえ理解していれば、高齢の方は安心できるということを知っておくとよいでしょう。

出典:『片づかない!どうする我が家、親の家 ミドル世代の暮らし替え整理術』

荷物の生前整理のやり方

片づけること = 捨てることではない を前提として、荷物を仕分け梱包する場合、どのようにしてやるのか?
手順は、3ステップです。

  1. 「分ける」
    あちこちに積まれているモノを、衣類、本、書類、などジャンル別におおざっぱにわけていく。
  2. 「減らす」
    「よく使っているモノ」「使っているモノ」「使っていないモノ」にわけてから、「使っていないモノ」を「使わないけど取っておく」と「捨てる」に分けて、ダンボールに衣類、本、キッチン用品などの中身を書いて、使っていない部屋に保管しておく。もしかして使うときが来たらそこから出せばいいだけなので「捨てなさい」という圧力から開放されてシルバーの方でも安心して仕分けられる。
  3. 「収める」
    今使っているモノを、出し入れしやすく居住スペースに収納する。このときの重要な事は、1アイテム1つ、例えば赤ペン1つ、ハサミ1つ、ボールペン1つというように、引き出しを開けて、誰でもわかるように収納すること。そして家族みんなが使ったら戻すをルールにして、それを守れば探しものをする時間が劇的に少なくなる。モノの住所が覚えられない場合は置き場所を読みやすく大きく書く。

この荷物の仕分けのやり方は、親も子も両方とも安心できると思いました。

親は暮らしやすい居住空間を得つつも、モノを捨てる喪失感を味合わなくてすむし、
子は残った荷物は親自身が分別したモノなので、将来処分するときが来ても、心理的にも時間的にも確実に負担が軽くなりますね。

 
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残されたモノ(死蔵品)はどうなるの?~遺品整理~

シニアになって、自分の荷物が整理されずに家中にあふれてしまったまま、旅立ってしまう。
そんな家は遺族が片づけることになります。遺品整理です。

著者のことばです。

もう、物置や蔵を増やさないで、

~中略~

いつの日か必ず誰かが、まとめて「捨てる」というツケを払わなくてはいけない時がやってくるのです。

親の実家を相続し、いざ、蔵一つ分の量のゴミを処分するとなったら、少なくとも数十万円の処分料がかかります。昔の蔵のように「お宝」が入っているなら、受け継いだ子どもや孫も満足ですが、負の遺産となる「死蔵」では誰も喜んでくれません。

出典:『片づかない!どうする我が家、親の家 ミドル世代の暮らし替え整理術』

著者は、最近依頼が増えてきた遺品整理は残された遺族には心労がつのるものだといいます。
つらくて、遺品が全て残ったままそのまま放置されている空き家もどんどん増えているそうです。

そして、遺品整理は経済的にも数十万の負担を遺族に残してしまうようなのです。

心労と経済的負担。

こんなものを残してしまったら、子どもの思い出の中に自分がどんな風に残るのだろう。
かなり、考えてしまいますね。

親の家ももちろん片付けたいですが、
「自分の持ち物も片づけておきたい。いや片づけておかなくては」と感じました。

 

仕分けが終わったら、モノはどう収めるの?

使っていないモノの仕分け梱包が終わったとして、使っているモノはどのように収めたらいいのでしょうか?

「家族全員がモノの置き場所を知っていて、使ったら戻すのルールを守れるのか?」自分的にはこれが一番知りたいことでもあります。自分ひとりが片づける家は、自分がいなければ家事が回っていかない家なのですから。

私が片付けたい目的は「自分がいなくても家事がまわる家にすることです。家族みんなで回す家です。」
そんな家にするためには、モノの配置がわかりやすく、戻しやすいことが重要です。

ラクラク収納ルール

  1. モノを減らす
    いつも使いやすい定位置を決めて1つだけに減らす
  2. 行動パターンにあった収納
    家族がつい置いてしまう場所に収納を作ると、みんながラクに片づけできる。ソファにコートを置いてしまうなら、ソファの脇にコート掛けを、玄関に小銭や鍵があるならトレーをおいて小物の置き場所を作ると自然に片付く。
  3. いつも使うモノは一等地に…手を伸ばしてラクに届く範囲(地上90cm~180cm位)
    収納のゴールデンゾーンによく使うモノを置く。高齢になると高い場所や床下収納などは、身体的にも負担になり、結局使えず放置することになってしまう。
  4. 一緒に使うモノはひとまとめ
    カトラリーセットや朝食セットなど、一緒に使うモノをトレーやかごにひとまとめにしておくと、そのまま出し入れできて効率的
  5. 出し入れしやすく
    出し入れしやすい収納のコツは「重ねないこと」例えば大皿を収納する際に上にモノを重ねてしまうと取り出すためにいちいち上のモノをどけて、出してからまた上のモノを元に戻さなくてはならず、この手間が億劫でだんだん使わなくなってしまいます。使わないとホコリや汚れでベタつき、使う前に洗い直さなくてはいけないので、ますます使うのが億劫になるという悪循環になる。書類ケースを使って立てて置くようにしたり、棚板と端材で簡易棚を作るとスムーズに出し入れできるようになる

このルールにそって、今使っているモノの定位置を決めて収めていくことで、片づけが終わります。
そして、最後のハードルはゴミ出し。

ゴミが家の中に残っていると、片付いた気がしないので、ゴミの日の前の日に片付けをすると家からスムーズに出すことができるので、片付けてすぐにすっきりして達成感を味わえるようです。

 

まとめ

親の家を片づけてあげたいと思って手にとった本ですが、読んで強く思ったのは
「親の家にしろ、自分の家にしろ、死蔵品を残すことが家族に負担をかけることになる。自分の荷物の整理は今からやっておこう。」ということでした。

「もったいない。まだ使える。高かった。」など、など使っていないのに手放せない理由と、万一自分が明日亡くなったとして、家族にかける負担を天秤にかけて考えました。

結果、「やっぱり家族に負担をかけたくない。」と思えました。
そして、使いやすく片づけることで「家事をシステマチックにして家族の誰でも家事を担える家にする。」という目標もできました。

自分にとって大切なモノを風呂敷2つにまとめて、床の間にいつも置いてある高齢の方の話も紹介されていて「かっこいいな!」と思い、「自分にとって大事なモノを選んでおくこと」がやってみたいことのひとつになりました。

今年はちょうど下の子どもの就職が決まったので、私にとっても第2の人生が始まるような気がしています。この本で知った、自分の人生の棚卸しともいえる、持ち物の「仕分け梱包」をやっていこうと思いました。

親の家の片づけに困っている人は、ぜひこの本を手にとって見てください。
仕分け梱包という方法で、親の住空間を快適にしてあげることができるかもしれません。差し迫っているなら思い切ってプロの力を借りるのもありだと思います。
 

 

親の家の片づけについては、この他にも2冊の本を読んでいます。
興味のある方は、こちらの記事もどうぞ。


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