今回紹介するのは、今話題のお金の本です。
この本はamazon Primereading の対象本になっていて、Prime 会員なら無料で読むことができました。
私もPrime 会員なのでこれを利用しました。
本の帯にあった
仮想通貨、フィンテック、シェアリングエコノミー、評価経済など、
なんだか難しい単語がいっぱいで、買って読むにはハードルが高かったんです。
無料なら難しくて途中で読むのを諦めることになってもまあいいか。と
結果は、難しい内容をかみくだいて説明しつつこれから先のビジョンにまで言及している壮大な内容で
何度か読んで内容をきちんと理解したいと思える良書でした。
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『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』
佐藤 航陽著
そもそも経済って何?
お金って何?
学校で習うこともなく、親から教えてもらうこともない
「お金や世の中を動かす仕組み」について知識がないぶん、先入観なしにこの本の内容を受け取ってみることにしました。
世の中を動かす力学~現実をつくる3つのベクトル~
この本では、経済とは世の中を動かす力学であり
影響力の大きい3つのベクトルの集合体が現実を作ると定義しています。
影響力が大きい3つのベクトルとは?
世の中の動きを決める3つの影響力の大きい3つのベクトルとは以下の3つです
-
- お金
- 感情
- テクノロジー
それぞれの力関係は以下の通りです
お金 > 感情 > テクノロジー
この3つが向かう方向性によって現実ができあがっていくと定義すると
ひとつの方向性に変化があると影響を受けて現実が変化していくということになります。
これは、昨今の時代の変化をつかむのにとても役に立つ見解だと思います。
最近は、お金とテクノロジーの部分に大きな変化がおこりつつあると感じていたので、先を楽しみに読み進みました。
経済とは何か?
お金と感情とテクノロジーが相互に影響しあってできるのが現実として
現実を表す指標として経済という言葉があります。
経済とは何なのでしょうか?
この本では、経済を
「人間が関わる活動をうまく回すための仕組み」と定義しています。
その仕組みの違いによって、資本主義とか社会主義とか名前がついているといえます。
経済をシステム構造的に考えるとお金が人の間を移動する動的なネットワークであり
ネットワークの構成分子は人間で、
そして人を動かすものは、欲望と欲求です。
お金は人の欲望と欲求を実現するために使われるのです。
こう考えると経済を読み解くためのキーとなるのは、
欲望と欲求ということになりそうです。
経済という動的なネットワークの特徴
そして経済という動的ネットワークには次の特徴があります。
- 極端な偏り
- 不安定性と不確実性
具体的にいうと
私達が何かを選ぶときに多くの人に支持されているものを選ぶ傾向があるので、商品を仕入れるお店も皆に売れるものを仕入れ、目立つところに置くので更に売れていくというサイクルが生まれます。人気者が更に人気者になっていく構造が生まれるのです。
そして、全体があまりにも緊密につながり、相互に作用し合う状態になると、偏る性質が相まって些細な事象が全体に及ぼす影響を予測するのが難しくなり、不安定な状態になる。
インターネットで世界中が常につながっている状態が、経済を予測不能で不安定な状態にしている要因だということがわかります。
そしてこれが経済格差の原因になっている。と
経済格差は特定の力のある人たちが暴利を貪った結果と考えられてしまいがちですが、実際は動的なネットワークの性質から避けられないものです。
出典:お金2.0新しい経済のルールと生き方
経済格差は、システムの問題であるというのは、初めて知る概念でした。
経済とは「人間が関わる活動をうまく回すためのシステムであり、
これからの経済は、創り上げていく対象へと変化していく」
そして、
物事をうまく回し、社会の不幸を最小限にすることができる、普遍的な経済構造とはどんなものなのか?
いよいよ、核心に迫ってきました。
発展する経済システムの5つの特徴と持続のための2つの要素
著者は、「生産活動をうまく回す仕組み」を「経済システム」と定義し、よく出来たシステムは個人に依存せずに仕組みで動くようになっており、持続的かつ自動的に発展する経済システムには5つの要素があるといいます。
5つの要素は以下の通りです。
- インセンティブ :報酬が明確であること。参加者に明確なメリットがある
- リアルタイム : 時間によって変化すること。常に状況が変化することを参加者が知っている
- 不確実性 : 運と実力の両方の要素があること。不確実性が活気を生む
- ヒエラルキー : 秩序の可視化、数字として可視化できるものや身分や肩書などの階層や序列
- コミュニケーション : 参加者が交流する場があることで全体が1つの共同体であることを認識できる
更に、この経済システムの安定性と持続性をもたせるためには更に2つの要素が必要になってくるといいます。
- 寿命 : 経済システムの「寿命」を考慮する。長く運営していると偏りが生まれ、飽きがくるので、次を用意する
- 共同幻想 : 参加者が同じ思想や価値観を共有していることによってシステムの寿命は飛躍的にのびる。
この2つのうち、寿命についてはあまり意識がありませんでした。
寿命がくるのは、長く運営することで発生する淀みと「飽き」がくることに起因するので、寿命がきたら別のシステムに移っていけるように選択肢を複数準備することが対策となります。
共同思想というのは、apple製品などのように明確な理念が美学があるとファンがついてくれるというのがよい例になります。
確かに利害だけでなく、価値観を共有することが長く続くシステムになるのは容易に想像することができます。
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勝手に拡大するシステムとは?~創発的思考~
さて、
現実を作るものが、お金、感情、テクノロジーの3つのベクトルの方向性で、
現実を動かす仕組みを経済と呼び、
うまくいく経済はシステムで動き、
現在の資本主義経済はインターネットやソーシャルメディアの発達によって世界は複雑化を極め、不確実性が増しているということがわかりました。
それでは
これからうまくいく仕組みとはどんなものなのでしょうか?
持続的に成長するシステムとはどんなものになるのでしょうか?
5つの要素は以下で
- 報酬(インセンティブ)
- 変動(リアルタイム)
- 不確実性
- 階層・序列(ヒエラルキー)
- 交流(コミュニケーション)
プラス2つの安定と継続のための要素は以下のとおりでしたね。
- 寿命による移動先
- 共同幻想
確かにうまくいっている企業やサービスは
先に紹介した5つの要素とプラス2つの安定継続のための要素がしっかりと組み込まれています。
世界的にみても、ディズニー、コカ・コーラ、グーグル、アップルなど、いずれも働く人たちに高い水準での金銭的報酬と社会的報酬を与えて、激しく変化を繰り返し、数字や役職などの秩序を可視化し、明確な理念をメンバーに浸透させることに多大な努力を割いています。
つまり、今の時代の経営者には、意識的にせよ、無意識的にせよ、この5つの要素を理解し、よくできた「経済システム」を作るプロであることが求められています。出典:お金2.0新しい経済のルールと生き方
仕組みがうまくいく理由はなぜか?
なぜこの特徴を持った仕組みがうまくいくのか?
理由は脳の特徴にありました。
欲望が満たされた時に快楽物質を分泌する
快楽を司る「報酬系」という神経回路です。
5つの特徴と2つの要素は、生理的欲求と社会的欲求を満たすための報酬系にカチッとハマるのです。
そして話しは更に大きくなっていきます。
うまく行っているシステムは、自然と似ているというのです。
複数の個がエネルギー循環によって相互作用して全体を構成し、最適となるように自動調節される。
このような特徴を持つものを「創発」といい、
この構造を使いこなす思想体系を「創発思考」と呼びます。
そして、これから経済システムを考える上で必要であり重要となってくる考え方だと結論づけています。
経済とは人の活動をうまく回すシステムであり、うまく回すためのカギは脳の報酬系にあり、うまく回るシステムのお手本は自然である。
だいぶわかってきた気がします。
ここから先はいよいよ未来の話になっていきます。
テクノロジーが作り出す社会の変化
3つ目のベクトルのテクノロジーは社会にどんな変化を起こすのでしょう。
答えは「分散化」と「自動化」です。
この本でいうところの分散化とはこのようなことが起こってくることです。
ただ現在は全員がスマートフォンを持ちリアルタイムで常時つながっている状態が当たり前になりました。
~略~
この状況が更に進むと、オンライン上で人と情報とものが「直接」かつ「常に」つながっている状態が実現します。そうすると中央で代理人がハブとして介在する必要性がなくなっていき、全体がバラバラに分散したネットワーク型の社会に変わっていきます。
~略~
そして分散化が進んでいくと、これまで力を持っていた代理人や仲介者はどんどん価値を失い、独自に価値を発揮する経済システムを作れる存在が力を持つようになっていきます。
~略~
これは中央集権的な管理者からネットワークを構成する個人への権力の逆流「下剋上」のようなものです。
出典:『お金2.0新しい経済のルールと生き方』
そして自動化とはこのようなものです。
ディープラーニングという手法は、膨大なデータを機械に学習させることで特徴量の抽出を自動で行うことができます。機械に猫を認識させるために、猫という概念を人間が教える必要はなくなり、大量の猫の画像を機械に読み込ませれば猫の特徴を理解し猫かどうかを認識できるようになったということです。膨大なマシンパワーが必要になるという課題はありますが、コンピュータの性能が上がればこのあたりは解決されるでしょう。
膨大なデータさえあれば現在人間がやっている知的労働の大半が自動化されるようになると知性さえも人間に固有の強みではなくなってしまう可能性が高いです。
出典:『お金2.0新しい経済のルールと生き方』
そしてこのふたつの流れが、今後の10年を考える上で非常に重要になると結論づけています。
産業革命に近いような大変化がおこりつつあるのかもしれません。
分散化の流れとして現れてきた経済モデル
分散化によって現在経済に起こっている変化とはどんなものなのでしょうか?
3つの例があげられていました。
- シェアリングエコノミー(共有経済) :例 UBAR、 Airbnb
- トークンエコノミー :例 仮想通貨、トークンエコノミー
- 評価経済 :例 YouTuberやインフルエンサーとファンとの間にできる経済
どれも分散化によって、新しい経済モデルとして登場してきたものです。
分散化と自動化の流れが作る新しいコンセプト~自立分散型~
分散化と自動化の両方が混ざったことで新しく出来上がったコンセプトがあります。
自立分散型 :全体を統合する中枢機能を持たず、自律的に行動する各要素の相互作用によって全体として機能する仕組み
これは、自然界そのものです。
すでに実際に始まっているプロジェクトもあります。
- AI とブロックチェーンによる無人ヘッジファンド
<無人ヘッジファンドのシステム>
1万人以上の匿名のデータサイエンティストが機械学習で投資モデルを作って、そのモデルで運用された資金が収益をあげるとトークンがデータサイエンティストに報酬として分配される。トークンはビットコインや法定通貨との交換も可能。 - 中国の無人コンビニ
<無人コンビニのシステム>
電子施錠されているコンビニの入り口でスマートフォンを使ってバーコードをスキャンしてWeChat のアカウントを認証して解錠して入店し、商品をレジの識別エリアに乗せると自動で価格が表示され、レジ画面のバーコードをスマホでスキャンして支払い完了。会計がすまなければ入り口の鍵が開かないので、万引きは困難です。中国ではスマホ決済と信用スコアが紐付いており、悪事をはたらくとスコアが下がりやスマホの決済の利用が凍結されることが大きな防犯対策になっています。
日本ではスマートフォン決済がまだまだ進んでいないので、まだピンときませんが、これが加速していくと個人がテクノロジーを使って簡単に経済を作ることができることにつながっていくという、「経済の民主化」ともいえるものすごい変化のようです。
それにともなって変化していくのが、お金そのものの価値の変化です。
お金そのものよりもどのように経済圏を作ってまわしていくかというノウハウが重要になる時代に変わっていく。と
話が壮大になりすぎて、だんだんついていくのが難しくなってきましたが、確かに10年前はインターネットとスマートフォンがこんなに普及してYouTuber なんて職業が生まれているとは考えてもみなかったし、今後10年で世の中が進んでいく方向性としてはありだな。と思わざるを得ません。
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資本主義では測れない価値~価値主義~
IT企業にとってなくてはならない大切なものは、人材と情報になりますが、この2つは資本主義の財務諸表上では計ることができません。
また、人々にとってもお金にならなくても価値があると思われるものは存在します。
そしてテクノロジーの発展によって、今まで可視化できなかった価値が数値で計れるようになってきました。
それによって資本から価値へのシフトが始まっていくようです。
この本では価値を3つに分類しています。
<価値の3分類>
- 実用性としての価値 :資本主義で計れる価値、役に立つか
- 内面的価値 :愛情・共感・興奮・好意・信頼などのポジティブな感情
- 社会的価値 :慈善活動やNPOなど、個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動
内面的価値や社会的価値は今まで可視化できなかったので、資本主義の中では軽視されてきたけれど、SNS やトークンの登場でその価値で経済圏を作ることが可能になってきており、今後資本主義に変わる価値主義という新しい社会システムが生まれてくるだろう。というのです。
資本主義が個人の利益や実用性としての価値を優先しすぎた結果、内面的な価値や社会的価値が犠牲になり始めたことに対する揺り戻しが起きていて、
価値主義とは、資本主義が認識できなかった価値をテクノロジーの力を使ってカバーする
資本主義の発展系である。と。
こんな風にして、現在のお金だけではない別のトークンなどの経済圏が複数できてそれを各自が選んでいる未来がある。
その未来では、お金そのものよりも経済圏を作ることに価値が生まれていて、社会的価値などにもお金が流れるようになっていく。
これからはお金を増やすことよりも、自分の価値を最大化することにエネルギーを注げ!その価値はトークンなどで価値化できるようになっていく。
未来の話はどんどん壮大になっていくのでした。
更にその先もあって、テクノロジーの進化によって、VR やAR 宇宙wifi による地球規模のインターネットなど。
SFのような未来が本当にやってくるのかもしれません。
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感情を切り離しお金をツールとして活用する!
お金と経済について、価値観の大変化が起こりそうなこれからですが、そんな変化を見すえてこれから大切にしたいことは何なのでしょう。この本のラストで作者が述べている格差についての見解がひとつの答えをくれました。これは心に刻みたいと思う文章だったので紹介したいと思います。
例えば、「格差」という言葉を聞いた時に何を思い浮かべるでしょうか?多くの方はネガティブなこと、悪いことであると感じるはずです。そして、この言葉にネガティブな感情を抱いてしまうと、その感情を鎮めるためにわかりやすい「悪者」をみつけようとしてしまいます。
誰か世の中に悪い人がいて、その悪者のせいで多くの人が永遠に厳しい生活を強いられているという風に感情を軸に答えを探そうとしてしまいます。そして、わかりやすい「スケープゴート(生贄)」を見つけては、袋叩きにして憂さを晴らします。感情的な不満を解消して溜飲を下げることには成功しますが、これによって「格差」という問題が解決することは永遠にありません。
1人の人間が個人の格差の要因になるほど、社会全体は小さくも単純でもないからです。仮にそうであったとしても、その「悪者」がいなくなっても次の「悪者」が出てくるだけで、根本的な解決には繋がりません。
これは感情的な偏見をもって臨んでしまった結果、「格差」という構造的な欠陥を解決するはずが、感情的な不満を解消することに問題が途中で「すり替わって」しまう典型例です。
~中略~
本来であれば、真剣に考えなければならなかったのは、経済システムの構造的な欠陥です。しかし、悪人らしい人をみつけては懲らしめてスカッとするという目の前のわかりやすい安易な道を私達は選んでしまいがちです。
経済の構造を分析して解決する制度を作るよりも、悪人っぽい人をみつけて吊し上げたほうが圧倒的に楽だからです。さらに、そのほうが多くの人も納得してくれて、評価までされるのであれば、なおさらそれを目指してしまうでしょう。
現在でも、政治、産業、組織内でこういった目の前のわかりやすい感情的な解消策で済ませようとする光景は、みなさんもよく見かけると思います。
第1章で説明したように、格差とは有機的なネットワークの循環が作り出す一種の「物理現象」です。取引を繰り返すうちに物事は徐々に偏りが発生していき、自然と格差はできてしまいます。そういった現象と構造を理解した上で、どんな制度であれば格差を固定化せずに社会全体が活気を持てるかを考えるのが建設的です。目の前の感情的な不満を解消することを繰り返しているうちは、本当の解決策は永遠に見つかりません。
つまり、本当にお金や経済が作り出す課題を解決したいと考えるのであれば、お金に自らがくっつけている「感情」を切り離して考えなければなりません。お金や経済が持つ特徴を理解した上で、それらを自分の目的のために「ツール」として使いこなす訓練が必要なのです。
出展:『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』
お金や経済に対して持ってしまった、不必要な感情や思い込みを切り離すきっかけになってくれそうな言葉がたくさんありますね。
感情的な憂さ晴らしに逃げずに問題を構造として考えることができれば、いろんなことが解決にむかっていくのかもしれません。
作者が一番伝えたかったのは、この部分なのではないかと思いました。
まとめ
経済の定義から始まり、そのシステム構造。そしてこれから向かっていく未来の話はかなり壮大な話で、頭の中がゲシュタルト崩壊寸前でした。何度も読み返して、こうして文章にまとめてみることで何とか自分なりに理解できたのかな。と思います。
ビットコインについては、もっと詳しく知りたくなりました。(笑)
これからの10年世の中はどうなっていくのでしょうか。
身近なところでは、我が家ではキャッシュレス化が大いに進行中で、applePay やLinePay PayPayなどのスマホ決済の便利さを実感中です。将来はトークンで支払いをしたり、受け取ったりしているのでしょうか?
じっくりと読んでやっと理解できた内容でしたが、これからの世の中の流れを知るうえで興味深い本です。
ぜひ、手に取ってじっくりと読んでみてください。
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