今回紹介するのは、ついに完結した真澄とレオンの物語
『swan -白鳥-ドイツ編』です。
swan は子供の頃に読んでいて、モスクワ編をみつけて真澄とレオンのその後のストーリーを楽しんでいました。
モスクワ編は、やり残していた過去の宿題のあれやこれやを乗り越えて、レオンとふたりでアグリーダックを踊りきった真澄メインの成長物語でしたが、ドイツ編はレオンの闇もついに出てきます。のっけからレオンが初の挫折?
バレエというよりもだんだん精神性の物語になっていきます。
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『swan -白鳥-ドイツ編』
有吉 京子著
真澄とレオンの娘の物語の『まいあ』があるので、真澄とレオンが結婚して娘がいて、ふたりが名だたるダンサーカップルになるという最終的な結果はわかっています。
モスクワ編とドイツ編で、真澄とレオンそれぞれの特に精神面での葛藤と成長を描いています。
役作りとふたりの精神的な状況がラップしていて、前半の葛藤の部分は読んでいて結構苦しかった。(笑)
ドイツ編でレオンの心の中のパンドラの箱は母親との関係だっとことがわかります。それを癒やしてくれたのが、モスクワ編でルシイへの罪悪感から自分を解放した真澄でした。
誰にでも、辛すぎて心の中で蓋をしてある心の傷があるものです。
一生のうちにそれを癒やすことができる人もできない人もいる。癒やすには自分に向き合うことになりキツイので、進んでやりたい人はあまりいないと思います。
それも、未熟なこころが作り出した当時の観念からの開放になるので、自分ひとりでは簡単にできることではありません。
誰か別の人に観念のゆがみを指摘してもらう必要があって、そんな面倒なことをしてくれる人にはそうそう出会えるものではありません。敵として現れてくる場合もあるので、特に気づきにくい。
真澄とレオン場合は、ぶつかり合いながら結果的に心に蓋をしたゆがんだ観念の修正に成功します。
これを役作りと踊りで表現したのが今回の『swan -白鳥-ドイツ編』なのかな。と思います。
運命の相手同士だからすんなりとうまくいったわけではなく、お互いに必要な試練を受けて成長した今があり、そして出来上がったふたりの新たな精神性を表現した「オテロ」というバレエはもちろん大成功。
舞台直前に妊娠がわかった真澄は、心身ともに愛そのもののデスデモーナとなり、レオンはその意志を尊重してともに踊ります。
部下にだまされて最愛の妻を疑って殺してしまい、自らも死を選ぶという悲劇のストーリーだった「オテロ」は真澄とレオンの解釈によって、
「人と自分自身を赦す、魂の救済のストーリー」
へと進化して劇場中を深い感動で満たします。
リアルイアーゴだった、クリスも一緒に癒やされるというおまけつきです。
実際は妊娠していて、踊れるのかというとそうは思えないけれど、
真澄とレオンにとっては「踊ること=生きること」だし、なによりフィクションなので踊るでしょう。
そして、場面はいっきに飛んで出産後の復帰公演、
仲間のメンバーたちの前でふたりが新たに目指すものを見せていくところで完結です。
真澄とレオンの物語。納得の結末です。
ひとつだけ心にひっかかるのは、セルゲイエフ先生。モスクワ編ではもう少し真澄への思いがあるような気がしていたのですが、結局、自分の舞踊世界に邁進していく真澄とレオン。そのはじめのきっかけをくれた。ということだったのでしょうか。
まとめ
ストーリーに精神性の内容が多くなっていた『swan -白鳥-ドイツ編』ですがダンスシーンの有吉京子先生の作画がきれいだったので、ず~と長きに渡って楽しめました。海外への取材もしっかり行って描いているのでリアル感がありました。
取材をきちんと行って描かれた漫画は、世界をひろげてくれますね。漫画をきっかけにして自分の知らない世界をずいぶん知ってきました。そして大人になったからこそ今回のような精神性にスポットライトを当てたストーリーをより深く楽しめるようになったのかもしれません。
大人になってしばらく漫画読むのをやめていたのがうその様に、再び漫画熱が高まって楽しいです。
電子書籍で買うと場所をとらないので、家族にも気兼ねなく読めるのもうれしい。
子供の頃にはわからなかったであろう精神性の物語を楽しむもよし、真澄とレオンのその後を知りたい人も『swan -白鳥-ドイツ編』手にとって見てください。
ドイツ編の前のお話『swan -白鳥-モスクワ編』も!
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